はじめに
時系列データを見るにあたり、トレンドをどうするかという問題があります。
1つの方法としては、トレンドがある種の型があるとして、トレンドを推計するというものです。
しかしそうではなく、時系列データを滑らかにして、傾向を見ていこうというものがあり、その1つとして、「移動平均法」があります。
移動平均法
移動平均法とは、ある時点のデータの前後を平均して、時系列データを滑らかにしようとするものです。
単純化のため、時系列データ$y_t$について、時間に伴って変化する滑らかな関数$f(t)$と偶然変動$u_t$により、
$y_t = f(t) + u_t$
と表されるとします。
このとき、$(2k+1)$項移動平均法を考えるものとして、$t$期の前後で、それぞれ$k$個の観測値で平均すると、
$\hat{y_t} = \dfrac{1}{2k+1}(y_{t-k} + y_{t-k+1} + \; \cdots \; + y_t + \; \cdots \; + y_{t+k})$
$\displaystyle = \dfrac{1}{2k+1}\sum_{t=-k}^k f(t+i) + \dfrac{1}{2k+1}\sum_{t=-k}^k t_{t+i}$
となります。
ここで、$u_t$は偶然変動であるので、一定期間の合計はゼロになると考えられ、$f$は滑らかならば$t$期の近くではほぼ線形になると考えられるので、
$\displaystyle \dfrac{1}{2k+1}\sum_{t=-k}^k t_{t+i} = 0$
$\displaystyle \dfrac{1}{2k+1}\sum_{t=-k}^k f(t+i) \fallingdotseq f(t)$
であることから、
$\hat{y_t} = f(t)$
を得ることができ、トレンドを求めることができます。
参考
中村隆英・美添泰人・新家健精・豊田敬『経済統計入門』