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戦略型ゲームと展開型ゲームでは、均衡の考え・求め方が異なる!

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投稿ゲーム理論初級
ゲーム理論において、戦略型ゲームと展開型ゲームでは、均衡の考え・求め方が異なるので、注意が必要です。
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はじめに

 ゲーム理論を学んでいると、最初に戦略型ゲームの話が出てきて、その後に展開型ゲームが論じられるということが多いと思います。

 しかし、展開型ゲームを学び始めると、戦略型ゲームにはない部分ゲームとか、部分ゲーム完全均衡とか、違う概念が出てきたりして、ややこしく感じる方も多いのではないでしょう。

 同じゲーム理論なのに、色々な概念が出てきて、混乱してしまう場合もあるでしょう。

 そして、その混乱の原因は、戦略型ゲームと展開型ゲームでは均衡の考えが異なる点をあまり認識していないからではないかと思います。

 そこで、その違いについて、説明します。

戦略型ゲームと展開型ゲームの違い

 戦略型ゲームと展開型ゲームでは、明らかに違うのは、ゲームを図示したとき、戦略型ゲームはマトリックス、展開型ゲームではツリーで表現されるということです。

 例えば、チェーンストアゲームを考えましょう。

 チェーンストアゲームにおいては、A店とB店があり、A店は参入するかしないかを選びます。B店はA店の参入に対して、協調するか、対立するかを選びます。
 この結果、(A店の利得、B店の利得)とすると、A店が参入しないときは(0 , 4)になるとします。A店が参入しないので、A店としては利得はなく、B店は既存の利得を維持できるという形です。A店が参入したとき、B店が対立を選ぶと、両店は傷つけあい、利得は(-2 , -2)になるとします。逆に、B店が協調した場合には、両店は利得を分け合うので、利得は(2 , 2)になるとします。

 これを、戦略型ゲーム・展開型ゲームで表すと、次の通りです。

(戦略型ゲーム)

B店
協調対立
A店参入する 2: 2-2:-2
参入しない 0: 4 0: 4

(展開型ゲーム)



 明らかに、ゲームの表現方法が違います。
 ただ、なぜ違う表現なのかと言えば、そもそもゲームのルールが違うからです。

 XとYというプレイヤーがいたとき、戦略型ゲームでは同時に戦略を決定するのですが、展開型ゲームでは、例えばプレイヤーXがある戦略を決め、それを踏まえて、次にプレイヤーYが戦略を決めるといった形をとります。

  戦略型ゲーム … プレイヤーが同時に戦略を決める

  展開型ゲーム … 各プレイヤーが交互に戦略を決めていく

 このため、戦略型ゲームにおいて、ナッシュ均衡となるような状態でも、展開型ゲームで考えたら、変なナッシュ均衡が存在する可能性があります。

 そこで、結論を言ってしまえば、戦略型ゲームと展開型ゲームでは、均衡の概念・導き方が変わり、

  戦略型ゲーム … ナッシュ均衡

  展開型ゲーム … 部分ゲーム完全均衡

という概念が用いられることになります。

カラ脅し

 変なナッシュ均衡と言いましたが、上のチェーンストアゲームで、それを見ていきましょう。

 もう一度、戦略型ゲームの利得マトリックスを見てみましょう。

B店
協調対立
A店参入する 2: 2-2:-2
参入しない 0: 4 0: 4

 A店・B店ともに同時に、戦略を決めると考えるので、ナッシュ均衡は、次の2つあることが分かります。

  (参入する、協調) = (2, 2)

  (参入しない、対立) = (0, 4)

 いずれも、両店が戦略を変えても、利得は上がらないので、ナッシュ均衡になっています。

 しかし、(参入しない、対立)は、実は変なナッシュ均衡であることが分かります。
 A店にとっては参入して、B店が協調してくるのが、望ましいと考えるでしょう。しかし、(参入しない、対立)がナッシュ均衡になるのは、B店が対立を示しているため、A店が参入すると、(参入する、対立)=(-2 , -2)となることが予想されるからです。
 ただ、B店からすると、A店が実際に参入したときには、対立すると利得がマイナスになるので、B店は協調を選択するはずです。

 すなわち、(参入しない、対立)におけるB店の対立という選択は、実際には行わない見せかけのものであると言えます。これをゲーム理論では「カラ脅し」といい、変なナッシュ均衡となっています(このような均衡を「不完全均衡」と言います)。

 このような問題を避けるために、用いられるのが、部分ゲーム完全均衡です。
 この定義はさておき、展開型ゲームで、両店の戦略の均衡を考えてみましょう。



 両店は先読みできるとして、このゲームを逆に見ていきましょう。

 逆に見るので、まずは、B店の戦略を眺めると、利得を比較すれば、B店は協調を選ぶことになります。そして、B店が協調を選ぶとするとして、A店の戦略を考えると、A店としては利得2が得られる参入を選ぶことになります。

 すなわち、展開型ゲームで考えたとき、(参入する、協調)のみが選ばれることになり、均衡していることになります(部分ゲーム完全均衡)。
 言い換えると、このような手順を踏むことで、(参入しない、対立)というようなカラ脅しに基づくナッシュ均衡を排除できることになります。

最後に

 初心者からすると、少しややこしい話かもしれませんが、戦略型ゲームと展開型ゲームでは、ゲームのルールそのものが異なり、それゆえに、均衡の概念が変わっていることに注意してください。

 逆に、この部分を抑えておかないと、何が何だか分からなくなってしまうので、気を付けてください。

参考

  奥野正寛(編著)『ミクロ経済学

  岡田章『ゲーム理論・入門

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