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ダービン・ワトソン比について、その意味や考えを説明

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投稿計量経済学中級
計量経済学において、系列相関の有無を調べる方法として、ダービン・ワトソン比(DW比)があります。このダービン・ワトソン比について、その意味や考えを数式・証明を交えながら説明します。
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概要

 基本的な回帰モデルにおいては、誤差項について正規分布 $ N(\sigma^2 , \, \rho)$ に従うとして、分散 $ \sigma^2$ や系列相関 $ \rho$ が一定・独立であることが前提とされます。

 しかし、この前提が必ずしも満たされるとは限らず、データを確認し、これらがどうなのかを調べる必要があります。

 そこで、系列相関 $ \rho$ について、相関があるのかないのかを調べようとするのが、ダービン・ワトソン比です。

 当然ながら、いくつものデータがある中で、いろいろと相関の可能性はありますが、ダービン・ワトソン比では、一期前のデータと相関があるのかを調べます。
 統計学的に言えば、誤差項 $ u_t$ について、

  $ u_t \, = \, \gamma u_{t-1} \, + \, \varepsilon$

のような1次自己回帰式で $ \gamma=0$ となるかが問題となります。

ダービン・ワトソン比の定義

 ダービン・ワトソン比( $ DW$ )は、残差 $ e_t$ について、次のように定義されます。

  $ \displaystyle DW = \dfrac{\displaystyle \sum^t_{i=1} (e_i – e_{i-1})^2}{\displaystyle \sum^t_{i=1} e^2_i} \qquad \cdots \qquad (1)$

 相関の有無を知るため、$ i$ 期の残差 $ e_i$ について、1期前の残差$e_{i-1}$との差 $ e_i – e_{i-1}$ をとっています。例えば、この差が0であるときには、$ i$ 期の残差と1期前の残差が等しいということで、正の相関があると考えられます。
 ただ、正負の問題があることから二乗したものとなっています。また、そのままの形では、データにより大きさが異なるため、 $ \sum^t_{i=1} e^2_i$ で割ることで、スケーリング・基準化しています。

ダービン・ワトソン比の解釈

 ダービン・ワトソン比を計算したとき、ダービン・ワトソン比は0~4の値をとり、次のように考えられます。

  $ DW$ が0に近いとき ⇒ 正の相関あり(自己相関あり)

  $ DW$ が2に近いとき ⇒ 相関なし

  $ DW$ が4に近いとき ⇒ 負の相関あり(自己相関あり)

 ですので、1次の自己回帰の有無を調べようとしたとき、系列相関がないことを求めようとするならば、ダービン・ワトソン比は2あたりの数値であることが必要になります。

なぜ、このような解釈になるのか

 解釈の考え方を分かりやすく説明するため、$ (1)$ 式を、次のように変形します。。

  $ \displaystyle DW = \dfrac{\displaystyle \sum^t_{i=1} e_i^2 – 2 \sum^t_{i=1} e_i \cdot e_{i-1} + \sum^t_{i=1} e_{i-1}^2}{\displaystyle \sum^t_{i=1} e^2_i} \qquad \cdots \qquad (2)$

正の相関があるとき
 完全に正の相関があるとき、残差について $ e_i=e_{i-1}$ が成立しますので、$ (2)$ 式は

  $ \displaystyle DW = \dfrac{\displaystyle \sum^t_{i=1} e_i^2 – 2 \sum^t_{i=1} e_i \cdot e_i + \sum^t_{i=1} e_i^2}{\displaystyle \sum^t_{i=1} e^2_i} = 0$

となります。このため、$ DW$ が0に近いほど、正の相関があるとされます。

相関なしのとき
 相関がないとき、残差について $ e_i , e_{i-1}$ はそれぞれ独立しており、$ e_i \cdot e_{i-1}=0$ が成立しますので、$ (2)$ 式は

  $ \displaystyle DW = \dfrac{\displaystyle \sum^t_{i=1} e_i^2 – 2 \sum^t_{i=1} e_i \cdot e_{i-1} + \sum^t_{i=1} e_{i-1}^2}{\displaystyle \sum^t_{i=1} e^2_i} = \dfrac{\displaystyle \sum^t_{i=1} e_i^2 + \sum^t_{i=1} e_{i-1}^2}{\displaystyle \sum^t_{i=1} e^2_i}$

となります。このとき、データ数 $ t$ が十分に大きければ、

 $ \dfrac{\displaystyle \sum^t_{i=1} e_{i-1}^2}{\displaystyle \sum^t_{i=1} e^2_i} \fallingdotseq 1$

が成立するので、

  $ \displaystyle DW = \dfrac{\displaystyle \sum^t_{i=1} e_i^2 + \sum^t_{i=1} e_{i-1}^2}{\displaystyle \sum^t_{i=1} e^2_i} \fallingdotseq 2$

となります。このため、$ DW$ が2に近いほど、相関がないとされます。

負の相関があるとき
 完全に負の相関があるとき、残差について $ e_i=-e_{i-1}$ が成立しますので、$ (2)$ 式は

  $ \displaystyle DW = \dfrac{\displaystyle \sum^t_{i=1} e_i^2 + 2 \sum^t_{i=1} e_i \cdot e_i + \sum^t_{i=1} e_i^2}{\displaystyle \sum^t_{i=1} e^2_i} = 4$

となります。このため、$ DW$ が4に近いほど、負の相関があるとされます。

まとめ

 数式を交えながら、ダービン・ワトソン比の意味や解釈を説明しました。

 正直、実証などを行うにあたっては、数学的な意味合いよりは、その値がどうなのかのほうが、遥かに重要です。

 とはいえ、そもそものダービン・ワトソン比の定義やこのような考えを知ることで、ダービン・ワトソン比が何を調べているのかを知っておくことは、大事だと思います。

参考

 伴金美・跡田直澄・中村二朗『エコノメトリックス

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