最後通牒ゲーム
最後通牒ゲームとは、2人の参加者がおり、1人は配分者、もう1人は受益者となり、配分者がその初期保有量の一部を、受益者に与え、受益者が受け入れれば、その額が双方で決まり、受益者が拒否すれば、両方がゼロになるというものです。
例えば、配分者の初期保有が1000円であったとしましょう。
このとき、
①配分者 … 1000円のうち、1円以上のx円を受益者に分け与えることを提示する。
②受益者 … 提示されたx円を見て、受け取るか、拒否するかを決定する
③配分 … 受益者が受け入れれば、配分者は1000-x円、受益者はx円を受け取り、拒否すれば、2人とも0円となる
となるようなゲームです。
サブゲーム完全均衡
これをゲーム理論で考えたときは、繰り返しゲーム(逐次手番ゲーム)となります。
ゲーム理論では均衡がどのようになるかを見るため、配分者の選択を1円もしくは500円を与える場合で考えてみましょう。
1円の場合は、配分者にとっては最小金額を受益者に渡すというもので、500円は初期保有を2人で分け合うということになります。
繰り返しゲームなので、後ろ向きに均衡を考えていく必要があるので、まずは受益者の選択を考えます。
【受益者】
受益者は、1円をもらえるときと、500円をもらえるときがありえます。
ただ、受益者がそれらの金額を拒否をすると、0円になるので、それぞれの利得は、
1円の場合、(受託、拒否)=(1円、0円)
500円の場合、(受託、拒否)=(500円、0円)
となり、いずれの金額でも、受益者は受け取るという選択を行います。
【配分者】
配分者は、受益者が受け取るという行動をとることが想定できるので、配分者の利益は、
1円与えたの場合、999円
500円与えた場合、500円
なので、1円を与えることになります。
以上から、ゲーム理論におけるサブゲーム完全均衡は、
配分者 … 1円与える(利益は999円)
受益者 … 1円受け取る(利益は1円)
となります。
行動経済学の知見
しかし、このゲームについて、実際の人間でやってもらうと、サブゲーム完全均衡のような数値にはならないことが知られています。
被験者の文化や所属集団・属性などで、異なってくるため、一意的な結果ではありませんが、おおよそ配分率が40%程度になることが、一般的なようです。
上の初期保有1000円で考えれば、
配分者 … 400円与える(利益は600円)
受益者 … 400円受け取る(利益は400円)
となるようです。また、拒否する率も10数%あるなど、サブゲーム完全均衡の結果とは大きく異なっています。
ただ直観的には、よく分かる感じがします。
受益者の立場で考えれば、低い金額を提示されたら不公平感や納得感がないため、拒否する可能性が高くなり、配分者の立場で考えれば、拒否されたら困るが、半々は面白くなく、やや自分のほうの利益を多くするといった結果が、上記のようになるのでしょう。
最後に
最後通牒ゲームに関連するものとして、独裁者ゲームがあります。
そして、この最後通牒ゲームや独裁者ゲームに関して、多くの実験が行われていますが、それらの結果を入門者向けにまとめたものとして、『最後通牒ゲームの謎』という本があります(このテーマだけで、本になるぐらいなので、それだけ実験が行われているということでしょう)。
小林佳世子『最後通牒ゲームの謎』
最後通牒ゲームや独裁者ゲームについての基本的な実験結果から、アレンジが加えられたものまで、様々なものが載っているので、読んでみてもいいかもしれません。
参考
大垣昌夫・田中沙織『行動経済学』
小林佳世子『最後通牒ゲームの謎』