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マルサスの罠について

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投稿その他の学問入門
人口問題であるマルサスの罠について、入門者向けに簡単に説明します。
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概要

 イギリスの経済学者マルサス(Malthus)は、人口は等比級数的に増加するが、人間の生活物資は等差級数的に増加すると考えました。
 
 これを図にすると、横軸に時間、縦軸に食料と人口をとった下図のような形になります。
 食料は直線的に増加していきますが、人口は時間が経つほどに増加が大きくなるような曲線を描くことになります。

 当初は、食料のほうが人口よりも多く問題はないのですが、時間が経つと、人口増加のほうが大きくなり、食料よりも人口のほうが多くなるようになります。

 (この図では描きませんでしたが)この結果、食料が足りなくなり、人口の増加が抑制されるとしました。

 この考えを「マルサスの罠」と言います。

人口抑制

 マルサスは、人口を抑制するには、積極的な方法と事前予防的な方法があると考えました。

  積極的な方法 … 飢餓、戦争 など

  事前予防的な方法 … 避妊、中絶 など

 前者の積極的な方法は死亡率の上昇によるもの、後者の事前予防的な方法は出生率の低下によるものとなっています。
 (現在の感覚からすると、残酷な感じもありますが、マルサスは18世紀・19世紀の人なので、現在の倫理観で考えないでください)

人口転換論

 ところで、現在の日本の状況を考えれば、人口は増加するどころか減少しており、マルサスのような状況にないと考えられます。

 このとき、人口学においては、「人口転換論」というものがあります。

 下図のように、まずは経済が発展していない状態では、多産多死の状況にあります。そこで、経済が発展すると、食料事情や衛生環境・医学発展などで死亡率が低下して多産少死になります。更に少産少死になるというものです。

 そして、近代の西欧社会では18世紀半ばまで、マルサスが想定していた多産多死の状況にあったが、20世紀半ばには、非マルサス的状況に変化したと考えられています。
(違う見方をすると、上記のマルサスの考えは、あくまでも多産多死を前提にしたものに過ぎないとも言えます)

最後に

 このマルサスの罠自体は、よく知られたものだと思います。

 ここで、マルサスの『人口論』から、一文を引用したいと思います。

「わたくしのいわゆる予防的制限と積極的制限という、人口にたいするこれら二つのおおきな制限に、婦人にかんする不道徳な習慣、大都市、不健康な製造工業、奢侈、疫病および戦争をくわえてよいであろう」

 「婦人にかんする不道徳な風習」などは、現在の男女平等を考えると、古めかしさを感じますが、「不道徳な習慣」や「大都市」、「奢侈」などが入っているあたり、意味深さを感じます。
 (特に、現在の日本において、東京などの大都市の出生率の低さを考えたとき、この「大都市」をあげているあたり、示唆的に感じてしまいます)

参考

 松浦司『現代人口経済学
 マルサス『人口論

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