EBPM
EBPMとは、Evidence Based Policy Makingの略称で、「証拠に基づく政策立案」と翻訳されている概念です。
政策の立案にあたっては、これまでは、
「このような事例があるから、効果があるだろう」
「明確な効果があるかどうかは分からないが、たぶん効果があるだろう」
などといった形で、政策が決定されてきました。
ひどい場合では、政策が決まっていて、それに対して、尤もらしいデータを用意する・数字を作るなどといったこともあります。
政策ありきでデータを用意するなどは論外として、これでは、政策を実施したから効果が得られたという因果関係が曖昧なままで、その効果も不明確です。
そこで、エビデンスに基づいて、政策を立案しようというのが、EBPMとなります。
簡単に言えば、データなどをしっかりと調べて効果などを検証しながら、政策立案をやっていきましょうというのが、EBPMになります。
EBPMの推進
現在、国の各省庁や地方自治体などで、EBPMを進めていこうという動きが出てきています。
例えば、行政改革を進める内閣官房行政改革推進本部においては、「EBPMガイドブック」を公表して、EBPMの推進を図っています。
政府の行政改革「EBPMの推進」
また、エビデンスにおいて重要なのはデータですが、必ずしも既存の統計などからデータが得られるとは限りません。そこで、個別の施策において、EBPMを実施するためのデータ収集も行われています。
例えば、中小企業がこれまでとは異なることを実施するにあたっての補助金である事業再構築補助金では、次のようにEBPMに関して、データ収集を行っています。
【経済産業省が行う EBPM の取組への協力に対する加点】
③ データに基づく政策効果検証・事業改善を進める観点から、経済産業省が行う EBPM の取組に対して、採否に関わらず、継続的な情報提供が見込まれるものであるか。(事業再構築補助金 公募要領(第11回)より)
課題
EBPM自体は素晴らしいですし、ある意味、当たり前のことともいえるでしょう。
しかし、実際の運用にあたっては、いくつもの課題があると考えられます。
・データの有無
・データの信頼性
・データの分析
・データ分析コスト
・政治・行政的判断 など
EBPMにおいては、データは必須ではないにしても、重要な要素であることは間違いありません。しかし、ある政策を実施しようとしても、データがなかったり、データがあっても信頼性に欠けるものであっては意味がありません。上記の事業再構築補助金の例でいえば、データがないため、データ収集を実施しています。そしてデータ収集できても、中小企業の事業者が正確にアンケートなどを回答しなければ、歪んだ結論を導いてしまいます。
データ分析にあたっても、いい加減なデータ分析が行われると、誤りが生じてしまいます。
効果を判断するには、因果関係が重要となりますが、データを分析しても、相関関係を因果関係と判断したりすると、誤った結論になります。
そのため、EBPMにおいては、ランダム化比較試験(RCT)、回帰不連続デザイン(RDD)、差の差分析 (DID)などを用いることが大事になりますが、(上記のようなデータの問題を含め)それらを用いて分析できるのかも問題になります。
職員数や予算にも限りがある中で、しっかりとした分析を行おうとすれば、大きなコストも発生しますが、それがどこまで可能であるかという問題もあります。
最後に、しっかりとした分析などを実施できたとしても、その分析結果に基づいて、政策が立案されるとは限りません。政治的判断や行政的判断という形で、効果がないとされる政策が継続されたり、効果があるとしても予算制約から他の政策を優先するため、政策が中止になることも考えられます。