概要
利潤率の傾向的低下法則とは、資本主義において、資本蓄積が進み、生産力が発展していくと、利潤率は時とともに低下していくというものです。
考え方
マルクス経済学において、生産手段として投下済みの「不変資本」$ C$と、労働力のように投下されただけ価値が変わる「可変資本」$ V$の2つ資本を考えます。そして、この2つの合計は「投下総資本」($ C+V$)と呼ばれ、この投下総資本を使って、生産活動を行います。
このとき、この生産活動により、剰余価値$ M$が生み出されたとすると、次のように利潤率を定義します。
$ \dfrac{M}{C+V}$
この利潤率は、投下総資本を使い、どれだけ剰余価値が生み出されたかということを示しています。
そして、この式を変形すると、
$ \dfrac{M}{C+V} = \dfrac{M / V}{(C/V) + 1}$
となります。ここで、$ M/V$は「剰余価値率」と呼ばれ、$ C/V$は「資本の有機的構成」と呼ばれます。剰余価値率$ M/V$は可変資本から生み出された剰余価値の割合を示し、資本の有機的構成$ C/V$は、不変資本と可変資本の関係を示しています。
ここで、剰余価値率$ M/V$を一定とし、資本蓄積が進み、資本の有機的構成$ C/V$が高度化していくと、利潤率は低下していくことが分かります(上式で言えば、分子の$ M/V$は一定の中、分母の$ C/V+1$は大きくなる)。
参考
平井規之・滝田和夫・北川和彦『経済原論』