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社会的厚生関数の数値例

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投稿公共経済学初級
公共経済学や公共選択論で出てくるベンサム型社会厚生関数・ロールズ型社会厚生関数の2つの社会的厚生関数について、数値例で説明しています。
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はじめに

 経済において、各個人は自己の効用を最大化して行動をしていますが、社会全体としてどうなのかを考えるのが、「社会的厚生関数」です。

 ある一部の個人がよい状態でも、他の個人が悪い状態ならば、社会全体としては望ましいと言えないからです。

 ただ、社会全体として望ましいとはどのような基準によるものかは、難しいところです。

 この代表として、ベンサム基準(ベンサム型社会厚生関数)とロールズ基準(ロールズ型社会厚生関数)という2つがあります。

 これら2つについて、定義を述べた上で、数値例を交えながら、説明したいと思います。

定義

ベンサム基準

 ベンサム基準とは、各個人の効用を足し合わせたものを、社会全体として最大化しようというものです。
 n人の個人がいたら、

  社会的厚生関数 = 個人1の効用 + 個人2の効用 + … +個人nの効用

というように考えるものです。

 社会全体といったときにまず思いつくような形で、直観的に分かりやすい考え方だと言えるでしょう。

ロールズ基準

 ただベンサム基準は問題があります。

 単純に各個人の効用を足し合わせたものなので、ある個人の効用が著しく低く、別の個人の効用が非常に高いような場合も、その合計が大きければ、是認されるという点です。
 多くの人が平等な状態よりも、不平等が著しくても社会全体の効用の総和が大きければ、後者のほうの社会のほうが望ましいとされてしまいます。

 そこで、別の基準として、ロールズ基準というものがあります。
 これは、社会全体として、最も効用の低い個人を基準にして、それを最大化しようというものです。

  社会的厚生関数 = 最も低い個人の効用

 ある意味、弱者を底上げしたほうがいいといった考え方です。

数値例

前提

 個人はAとBという2人だけの経済を考えます。
 いずれも同じ効用関数であり、この効用関数は逓減するものとします。

 このとき、所得と効用の関係は、次のようになっているとします。

所得
1020304050
効用
530506065

 例えば、所得が10のときには、効用は5といった具合です。

 なお、所得の増加とともに、効用の増分も減少しており、限界効用逓減の法則が成立していることに注意してください。
 所得は10ずつ増加していますが、10から20へは効用の増加は25(=30-5)、20から30へは効用の増加は20(=50-30)というように、だんだんとこの増加は減少しています。

再配分

 ここで、AとBの間で、所得の再配分を行うことを考えます。
 再配分前は、Aの所得は50で、Bの所得は10とし、Aのほうがはるかに所得が大きい状態であるとします。

 そこで、AからBへの所得を移転させることを考え、その状態を一覧にしたのが、下表です。

再配分
0102030
Aの所得
50403020
Bの所得
10203040
Aの効用
65605030
Bの効用
5305060

 上段の再配分は、AからBへの所得移転の状態を表します。再配分0では、初期の状態ですが、再配分10ではAからBに所得が10移転される状態を表しています。

 そして、それぞれの再配分による所得と、上記の所得と効用の関係の表から導き出されるA・Bの効用が示されています。

 なお、再配分20では、AとBの所得は等しくなっている(そのため効用も等しくなっている)ことに注意してください。

ベンサム基準とロールズ基準

 上記の再配分により、ベンサム基準とロールズ基準に基づいて、社会的厚生を計算したのが、下表です。
 例えば、再配分0のときには、ベンサム基準ではA・Bの効用を足し合わせたものなので、70(=65+5)となっており、ロールズ基準では、AとBの効用を比べBのほうが低い5という値が採用されています。

再配分
0102030
ベンサム基準
709010090
ロールズ基準
5305030

 表を見ると、再配分前(再配分0)の状態から、再配分を行うことで、いずれも段々と社会的厚生は高まっていき、2人の所得が等しくなる再配分20で、社会的厚生は最も大きくなっています。

 以上から、ベンサム基準・ロールズ基準いずれにおいても、2人の所得が同じなるように所得を再配分することが望ましいとされます。

留意点

 上記では単純に所得が与えられていましたが、再配分前の所得が努力や労働量などによって決まるとした場合、どうなるでしょうか。

 努力しようが一生懸命働こうが、最終的には同じ所得に再配分されるため、一生懸命に努力してきた個人Aは、働かなくなるでしょう。
 逆に、怠けていたりして所得10しかなかった個人Bは、怠けていたがゆえに、Aから所得を20受け取ることができ、非常に得をしています。

 このように、上記の例では、努力・労働量といったものを考えたとき、悪平等が成立するような再配分となっています。

 なお、労働という概念や再配分の方法を変えれば、違う結果になります。

参考

  井堀利宏『基礎コース 公共経済学

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