コブ=ダグラス型効用関数
ミクロ経済学において、コブ=ダグラス型の効用関数を考えることがあります。
財としては$n$財あるとして、各財の消費量を$x_i$とすると、効用関数が
$\displaystyle u = \prod_{i=1}^n x_i^{\alpha_i} = x_1^{\alpha_1} \cdot x_2^{\alpha_2} \quad \cdots \quad x_n^{\alpha_n} \quad \cdots \quad (1)$
となっているような場合です。
そして、この消費者は、
$\displaystyle \sum_{i=1}^n p_i x_i = E \quad \cdots \quad (2)$
という予算制約式のもと、効用を最大化するとします。
このときに、需要関数・価格弾力性・代替の弾力性などは、どうなるかを見てみましょう。
効用最大化
$(1)(2)$式から、効用最大化問題を解くため、次のようなラグランジュアンを定義します。
$\displaystyle L = \prod_{i=1}^n x_i^{\alpha_i} + \lambda(E \, – \, \sum_{i=1}^n p_i x_i)$
これを$x_i$で微分し、$0$とすると
$\displaystyle \lambda = \dfrac{\displaystyle \alpha_i \prod_{i=1}^n x_i^{\alpha_i}}{p_i x_i} = 0$
であり、$i \neq j$の場合で考えて、$\lambda$を消去すると、
$\dfrac{\alpha_i}{\alpha_j} \dfrac{x_j}{x_i} = \dfrac{p_i}{p_j} \quad \cdots \quad (3)$
という1階条件を得ることができます。
需要関数
1階条件$(3)$式を変形すると、次を得ることができます。
$p_i x_i = \dfrac{\alpha_i}{\alpha_j} x_j$
これを予算制約式$(2)$に代入すると、
$\dfrac{\alpha_1}{\alpha_j} x_j + \quad \cdots \quad + p_j x_j + \quad \cdots \quad + \dfrac{\alpha_n}{\alpha_n} x_n = E$
となります。
これを整理すると、
$x_i = \dfrac{\alpha_i}{\displaystyle \sum_{j=1}^n \alpha_j} \cdot \dfrac{E}{p_i} \quad \cdots \quad (4)$
となり、需要関数を得ることができます(一般的な表記にするため、$x_j$ではなく、$x_i$で表しています)。
なお、上記では仮定しませんでしたが、コブ=ダグラス型の効用関数が1次同次ならば、
$\displaystyle \sum_{j=1}^n \alpha_j = 1$
なので、$(4)$式は、
$x_i = \alpha_i \dfrac{E}{p_i}$
となります。
いずれにせよ、次のような結論を得ることができます。
予算:予算$E$が上昇すると、$i$財の需要は上昇する
価格:$i$財の価格$p_i$が上昇すると、$i$財の需要は減少する
ウエイト:$i$財のウエイト(重要度)$\alpha_i$が高まるすると、$i$財の需要は上昇する
需要の価格弾力性
需要の価格弾力性を求めるために、まずは、需要関数$(4)$式から、
$\dfrac{d x_i}{d p_i} = – \dfrac{\alpha_i}{\displaystyle \sum_{j=1}^n \alpha_j} \cdot \dfrac{E}{p_i^2}$
となります。
ここで、需要の価格弾力性$\epsilon$は、
$\epsilon = \dfrac{dx_i /x_i}{d p_i /p_i} = \dfrac{dx_i}{dp_i} \dfrac{p_i}{x_i}$
なので、$(4)$式も使うと、
$\epsilon = – \dfrac{\alpha_i}{\displaystyle \sum_{j=1}^n \alpha_j} \cdot \dfrac{E}{p_i^2} \cdot p_i \cdot \dfrac{\displaystyle \sum_{j=1}^n \alpha_j}{\alpha_i} \cdot \dfrac{p_i}{E} = -1$
であり、需要の価格弾力性は-1となります。
代替の弾力性
代替の弾力性を求めるために、まずは、1階条件$(3)$式を全微分します。
$-\dfrac{\alpha_i}{\alpha_j} \left( \dfrac{x_i}{x_j} \right)^{-2} d(x_i / x_j) = d(p_i / p_j)$
ここで、代替の弾力性$\sigma$は、
$\sigma = \dfrac{d(x_i/x_j) / (x_i/x_j)}{d(p_i/p_j) / (p_i/p_j)} = \dfrac{d(x_i/x_j)}{d(p_i/p_j)} \dfrac{p_i/p_j}{x_i/x_j}$
なので、$(3)$式も使うと、
$\sigma = – \dfrac{\alpha_j}{\alpha_i} \left( \dfrac{x_i}{x_j} \right)^{2} \cdot \dfrac{\alpha_i}{\alpha_j} \dfrac{x_j}{x_i} \cdot \dfrac{x_j}{x_i} = -1$
であり、代替の弾力性は-1となります。