はじめに
ミクロ経済学の消費者行動について、ある財の消費が増えたとき、他の財がどうなるかを考えることがあります。
例えば、ある消費者がキャベツとレタスを消費しているとして、キャベツの消費が増えたとき、レタスの消費はどのようになるのかが、気になるといった具合です。
通常で考えれば、キャベツの消費が増えれば、レタスの消費は減ると思われますが、経済学的にこれをしっかりと定式化する必要があります。
そして、これを経済学的に説明する概念として、限界代替率があります。
限界代替率(MRS)
限界代替率(MRS)とは、消費者がある財を追加で1単位消費するときに、他の財の消費をどれだけ減らすことができるかを示す主観的価値のことです。
これは、消費者が同じ効用を維持するために、ある財を他の財と交換する比率としても、考えられます。
ある消費者が財$x$と$y$を消費するとしたとき、限界代替率$MRS$は、次のように表されます。
$\displaystyle MRS = – \dfrac{\Delta y}{\Delta x}$
式から、財$x$の増加分$\Delta x$に対して、財$y$がどれだけ減少するかを表しています。
ところで、この消費者の効用関数を$u(x \, y)$として、全微分すると、
$\Delta u(x \, y) = u_x \, \Delta x + u_y \, \Delta y$
であり、効用は変化しないとして、$\Delta u(x \, y) = 0$とすると、
$u_x \, \Delta x + u_y \, \Delta y = 0$
となります。この式を変形すると、限界代替率は、
$\displaystyle MRS = \dfrac{u_x}{u_y}$
となります。
すなわち、限界代替率は、各財の限界効用の比を表していることになります。
限界代替率逓減の法則
限界代替率逓減の法則とは、消費者がある財の消費を増やし、他の財の消費を減らすと、限界代替率が低下していくといくものです。
言い換えると、消費者が一つの財を増やすにつれて、その財を追加で消費するために、追加的に減少させる他の財の量は減少していくというものです。
限界代替率が逓減するには、次が成立している必要があります。
$MRS_x < 0 \quad , \quad MRS_{xx} > 0$
$MRS_y < 0 \quad , \quad MRS_{yy} > 0$
効用関数の特定化例
限界代替率と限界代替率逓減の法則について、イメージがつきやすいように、効用関数を特定化した場合の例を挙げてみましょう。
効用関数は、
$u(x \, y) = \sqrt{x \, y}$
で表されるとものとします。
このとき、限界代替率は
$MRS = – \dfrac{\Delta y}{\Delta x} = \dfrac{u_x}{u_y} = \dfrac{\dfrac{1}{2} x^{-1/2} y^{1/2}}{\dfrac{1}{2} x^{1/2} y^{-1/2}} = \dfrac{y}{x}$
となります。
そして、この効用関数のもとで、限界代替率に微分すると、
$MRS_x = – \dfrac{y}{x^2} < 0$ $MRS_{xx} = 2\dfrac{y}{x^3} > 0$
となり、限界代替率逓減の法則が成立していることが分かります。
参考
奥野正寛(編著)『ミクロ経済学』
武隈愼一『ミクロ経済学』