スポンサーリンク

ソロモン王のジレンマのメカニズムデザイン的な解法

スポンサーリンク
 
囚人のジレンマ、硬貨合わせゲームなど、ゲーム理論においては、様々な種類のゲームが出てきます。これらの基本的なゲームをまとめています。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

はじめに

 ソロモン王のジレンマとは、2人の女性が1人の赤ん坊を「自分の子供だ」と主張した際、ソロモン王が真の母親を見極めるために、「赤ん坊を半分に分けよう」と提案した話です。
 しかし、ゲーム理論的に考えると、真の母親は自分の子供だと主張せず、偽の母親が自分の子供だと主張してしまうという問題が生じます。

   ソロモン王のジレンマについて

 このような問題を解決するために、真の母親は自分の子供だと主張し、偽の母親は自分の子供だと主張しないような仕組みが必要ですが、二位価格オークションを用いた解法があります。

二位価格オークションによる解法

 真の母親をX、偽の母親Yとして、それぞれの母親の赤ん坊への評価額をxとyとします。ただし、真の母親のほうが評価額は高いとして、x > yであるとします。

 何の仕組みも入れずに、どちらが真の母親であるかを判断しようとすれば、より高く赤ん坊を評価している者を選ぶことになったりもしますが、それぞれの母親が真の評価額を表明するとは限りません。
 真の母親のほうが評価額が高いとしても(x > y)、真の母親にとっては、より低い価格を表明したほうが得ということになる可能性があります。また、偽の母親にしても、何の費用も発生しなければ、とりあえずは自分がこの赤ん坊の母親だと主張したほうが合理的です。

 これらの問題を避けるため、次のルールを設けます。

  ①より高い価格を表明したものを、真の母親だとして赤ん坊を受け取れる

  ②そして真の母親だとされた者は、もう1人の人が表明した価格を支払う必要がある

  ③自分の子供だと主張するには、費用cが発生する(ただし、x – y > c、x > c、y > cとする)

 このルールのもと、XとYは、自分の子供であるかを主張するか、主張しないかを選択します。

真の母親の選択

 まずは、真の母親Xは、どのような選択をするのかを考えます。
 上記のルール②から、これは二位価格オークションになっており、真の母親Xは、自身の評価額xよりも低い価格を言うインセンティブがなく、

  表明する価格 = 評価額

となります。
 これをもとに、Xの選択を考えていきます。

 母親だと主張しなければ、何の費用も発生しない代わりに、利得もないことになります。

 次に、Yが母親だと主張せずに、Xだけが母親だと主張すれば、そのまま赤ん坊を手に入れることができ、費用cは発生しますが、評価額xを手に入れることができます。

 最後に、XとY両方が母親だと主張した場合、x > yから、真の母親Xは赤ん坊を手に入れることができますが、上記のルール②と③から、Xの利得は、x – y – cとなります。

 以上をまとめると、Xの利得は、次のようになります。

偽の母親Y
主張する主張しない
真の母親X主張するx – y – cx – c
主張しない00

 ここで、x – y – c > 0であることを注意すると、Xにとっては、Yの選択がどうであれ、自分が母親であることを主張したほうが、利得が高いことが分かります。

 このことから、Xは自分が母親であることを「主張する」という選択しかとらないことになります。言い換えれば、Xにとって「主張する」は、支配戦略になります。

偽の母親の選択

 次に、偽の母親Yの選択を考えます。

 まずは、真の母親と同様に、自分が母親であることを主張しなければ、費用も発生しませんが、利得もありません。

 次に、Xが母親だと主張せずに、自身だけが主張すれば、y – cの利得を得ることができます。

 最後に、XとY共に自分が母親だと主張した場合には、どちらも真の評価額を表明することになるのですが、x > yから、偽の母親Yは負けになり、参加費のみを支払うことになります。

 以上をまとめると、Yの利得は、次のようになります。

偽の母親Y
主張する主張しない
真の母親X主張する– c0
主張しないy – c0

 上記の通り、真の母親Xの支配戦略は「主張する」であり、必ず自分が母親であることを言ってくるはずです。そこで、YはXが主張した場合の利得を考えると、Yは「主張する」と費用が発生するだけなので、「主張しない」を選択することになります。

まとめ

 以上から、XとYの選択は、それぞれ次のようになります。

  真の母親X ⇒ 主張する
  偽の母親Y ⇒ 主張しない

 このように、上記のようなルール・仕組みを導入したことにより、最も望ましい結果を得ることができます。

参考

  川越敏司『マーケット・デザイン

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました