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マクロ経済学における基本的なライフサイクル理論について(数式)

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投稿マクロ経済学中級
マクロ経済学における基本的なライフサイクル理論について、数式で説明しています。
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はじめに

 マクロ経済学において、どのように消費が決定されるのかという問題は、1つのテーマです。

 ケインズ型の消費関数においては、その期の所得の水準によって、消費額が決定されるとされます。
 $C$を消費、$Y$を所得、$\bar{C}$を基礎消費とすると、次のような式です。

  $C = c Y + \bar{C}$

 直観的には分かるのですが、少し考えれば、人は将来の所得や資産の状況によって、消費も変化させるというのが、消費の決定について、相応しい考えといえるでしょう。

 そして、これをモデル化したのが、「ライフサイクル理論」になります。

ライフサイクル理論

モデル
 ライフサイクル理論においては、その期のみならず、将来の効用も考えて、消費額を決定します。
 $t$期の消費を$C_t$、各期の効用関数を$u(\cdot)$、生涯を通じた効用を$U$として、その人が$T$期まで生きるとすると、生涯効用は、次のようになります。

  $\displaystyle U = \sum_{t=1}^T u(C_t) \quad u'(\cdot)>0 \, , \, u^”(\cdot)<0 \quad \cdots \quad (1)$

 各期の効用関数$u(\cdot)$の1階・2階微分の条件は、言うまでもないかもしれませんが、限界効用逓減の法則を示しています。

 この式から、この消費者は毎期、$C_t$の消費を行うわけですが、生涯を通じた効用は$U$になるということになります。

 他方、この消費者は無尽蔵に消費を行えればいいのですが、そういうわけにはいきません。元々もっていた資産$A_0$と、毎期の所得$Y_t$によってに得た額でしか消費を行うことはできません。

 このとき、この消費者は、次のような予算制約に直面します。

  $\displaystyle \sum_{t=1}^T C_t \leq A_0 + \sum_{t=1}^T Y_t \quad \cdots \quad (2)$

 なお、借入はできないとして、あくまでも毎期の所得と元々の資産の中から、消費を行うものとします。

最大化
 消費者は、$(2)$式の予算制約式のもと、$(1)$式を最大化するので、ラグランジュアンにて、問題を解くことにします。
 ラグランジュ乗数を$\lambda$とすると、次のような式になります。

  $\displaystyle L = \sum_{t=1}^T u(C_t) + \lambda \left( A_0 + \sum_{t=1}^T Y_t \, – \, \sum_{t=1}^T C_t \right)$

 この式を最大化すると、その1階条件は、

  $\displaystyle \dfrac{d \, L}{d \, C_t} = u'(C_t) \, – \, \lambda = 0$

から、

  $u'(C_t) = \lambda \quad \cdots \quad (3)$

を得ることができます。

消費量の決定
 $(3)$式を見ると、消費の限界効用は一定$\lambda$であることが分かります(逆に言えば、時間を通じて、消費がへんかするならば、この$(3)$式に時間$t$が入ってくることになりますが、そうはなっていません)。

 ということは、毎期の消費は同じになることになり、

  $C_1 = C_2 = \quad \cdots \quad = C_T \quad \cdots \quad (4)$

が成立します。

 この式を予算制約式の$(2)$式に代入すると、

  $\displaystyle C_t = \dfrac{1}{T} A_0 + \dfrac{1}{T} \sum_{t=1}^T Y_t \quad \cdots \quad (5)$

を得ることができます。

ポイント
 導出された$(4)(5)$式から、ライフサイクル理論においては、次のような結論が得られます。

 ・$(4)$式から、消費者は毎期、同じだけの消費を行う。

 ・$(5)$式から、初期の資産と毎期の所得の合計を$T$期に分割して、毎期、消費を行っていく。

 このことから、当然ながら、初期の資産が大きくなれば、取り崩せる資産も多くなるので、毎期の消費量は多くなります。また、任意のある期において、所得が一時的に増えても、その期に消費を増やすのではなく、平準化して消費を行うことになります。

注意点

 上記のライフサイクル理論は、あくまでも基本的なモデルなので、いくつかの問題点があります。
 例えば、

  ・所得は確実な値になっているが、将来の所得は分からない

  ・消費を我慢して貯蓄をすれば、利子が発生するが、利子率(及び主観的割引率)がモデルに入っていない

  ・借入ができない   など

 そして、これらの問題を考慮したモデルもあり、それらによると、結論は変わってきます。

参考

  デビッド・ローマー『上級マクロ経済学

  宇南山卓『現代日本の消費分析:ライフサイクル理論の現在地

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