はじめに
経済における物価指数について、大きなものとして、次の2つがあります。
「ラスパイレス指数」
「パーシェ指数」
数式で説明すれば、財が$n$個あるとして、$i$財の$t$期の価格・数量を$p^i_t、q^i_t$とし、基準時点である$0$期の価格・数量を$p^i_0、q^i_t$とします。このとき、それぞれの指数は、次のようになります。
ラスパイレス指数:$\displaystyle \dfrac{\sum^i p^i_t q^i_0}{\sum^i p^i_0 q^i_0}$
パーシェ指数:$\displaystyle \dfrac{\sum^i p^i_t q^i_t}{\sum^i p^i_0 q^i_t}$
違いとしては、ラスパイレス指数は基準時点の数量をベースにしているのに対して、パーシェ指数は測定の$t$期の数量をもとにしています。
ところで、一般にパーシェ指数のほうが、指数の値は低くなりやすいという特徴があります。
代表的な物価指数であるラスパイレス指数・パーシェ指数について、説明
数値例
なぜ、ラスパイレス指数よりも、パーシェ指数のほうが、指数の値は低くなりやすいのかについて、数値例で説明します。
まずは、2つの財A・Bを考え、0期と1期の物価と数量がそれぞれ次のようになっているとしましょう。
財A | 財B | |||
---|---|---|---|---|
物価 | 数量 | 物価 | 数量 | |
0期 | 100 | 8 | 100 | 5 |
1期 | 150 | 10 | 200 | 10 |
このとき、それぞれの指数は、次のように計算できます。
ラスパイレス指数:$\displaystyle \dfrac{150 \times 8 + 200 \times 5}{100 \times 8 + 100 \times 5} = 1.69$
パーシェ指数:$\displaystyle \dfrac{150 \times 10 + 200 \times 5}{100 \times 8 + 100 \times 10} = 1.75$
数字を見ると、パーシェ指数のほうが、高い値となっています。
「ところで、これは正しいのでしょうか?」
消費者からすると、財Aと財Bを比べると、どちらも物価は上昇していますが、財Bのほうが大きく値上がりしています。
そうしたとき、財Aと財Bが代替的ならば、財Bの購入量を減らして、財Aの購入量を増やすでしょう。
このとき、例えば、財Bの購入量を3減らして、財Aの購入量を3増やしたとします。
表としては、次の通りです。
財A | 財B | |||
---|---|---|---|---|
物価 | 数量 | 物価 | 数量 | |
0期 | 100 | 8 | 100 | 5 |
1期 | 150 | 13 | 200 | 7 |
そして、それぞれの指数を計算すると、次のようになります。
ラスパイレス指数:$\displaystyle \dfrac{150 \times 8 + 200 \times 5}{100 \times 8 + 100 \times 5} = 1.69$
パーシェ指数:$\displaystyle \dfrac{150 \times 13 + 200 \times 7}{100 \times 13 + 100 \times 7} = 1.68$
ラスパイレス指数に変化はありませんが、パーシェ指数は1.68となり、パーシェ指数のほうが低い値となっています。
このように、物価の影響を考慮して、数量も変化した値をもとに計算されるため、ラスパイレス指数よりも、パーシェ指数のほうが、指数の値は低くなりやすいことになります。