Jカーブ効果
国際貿易において、為替レートが変化したとき、一時的に本来の動きとは逆の貿易収支となることがあります。
例えば、円安ドル高になったとすれば、輸出が増え、輸入が減るので、貿易収支は改善されます。
つまり、通常でしたら、次のようなパターンをとると考えられます。
円安ドル高 → 貿易収支の増加
円高ドル安 → 貿易収支の減少
しかし現実は、短期的にはこのような動きにはならず、次のように、逆の貿易収支となります。
円安ドル高 → 貿易収支の減少
円高ドル安 → 貿易収支の増加
これを横軸に時間、縦軸に貿易収支をとり、円安ドル高なった場合の図が下のものです。
最終的には、円安の効果を受けて、貿易収支は当初よりも増加しますが、一時的には貿易収支の悪化を招いている形になっています。
そしてこのような効果を、この図の形状から、「Jカーブ効果」と言われます。
Jカーブ効果の原因
なぜ、Jカーブ効果のような現象が生じるかと言えば、価格と数量の調整時間の相違からです。
価格である為替レートはすぐに増減しますが、数量は実物取引を行っており、すぐに変更はなされません。そうすると、為替レートは変わりましたが、数量はそのままの数字で、輸出額や輸入額が決まるので、Jカーブ効果のような現象が生じるとされます。
例として、具体的な数字で考えてみましょう。
日本とアメリカはそれぞれ、1台ずつ車を輸出入しているとします。
日本の車の価格は100万円、アメリカの車の価格は1万ドルで、1ドル=100円とすると、貿易収支は、
貿易収支 = 輸出 - 輸入
なので、日本の貿易収支は、次のようになります。
(1ドル=100円の場合)
貿易収支 = 100万円 × 1台 - 1万ドル × 100円/ドル × 1台 = 100万円 - 100万円 = 0円
貿易収支は均衡している状態になっています。
ここで、円安ドル高になり、1ドル=200円になったとします。
短期的には、数量は変わらないので、輸出・輸入共に1台ずつです。そして輸出については、日本円での場合を考えているのでそのままです。しかし、輸入に関しては影響を受け、次のようになります。
(1ドル=200円の場合)
貿易収支 = 100万円 × 1台 - 1万ドル × 200円/ドル × 1台 = 100万円 - 200万円 = -200万円
数量が変わらず、為替が円安になったことで、貿易収支は赤字になります。ただ時間が経てば、数量の調整も進むので、貿易収支は黒字化すると考えられます。
逆に、円高ドル安になった場合も、考え方は同様です。
1ドル=50円になったとしたら、貿易収支は次のようになります。
(1ドル=50円の場合)
貿易収支 = 100万円 × 1台 - 1万ドル × 50円/ドル × 1台 = 100万円 - 50万円 = 50万円
通常でしたら、円高ドル安なので、貿易収支は減少すると思われますが、数量調整に時間がかかり、数量がそのままだと、逆に貿易収支は黒字となっています。