はじめに
パロンドのパラドックスとは、1個1個では負けるゲームですが、それを組み合わせると、勝てるゲームになるというものです。
個々では負けるのに、それが勝てるゲームになることから、直観に反したものとなっており、パラドックスと言われます。
そして、これを発見した物理学者の名をとって、パロンドのパラドックスと言われています。
パロンドのパラドックス
個々のゲーム
それでは、具体的にパロンドのパラドックスについて、見ていきましょう。
まずは、最初に100円をもっているとして、次に2つのゲームがあるとして、それぞれを100回繰り返します。
(ゲームA)
毎回、1円失う。
(ゲームB)
所持金が偶数のときは3円得て、奇数のときは5円失う。
この2つのゲームについて、個々に行ったときの利益は、次のようになります。
(ゲームAの利益)
毎期、1円ずつ失っていくので、次のように、最後は所持金は0になります。
利益 = 100 + 100 × (-1) = 0
(ゲームBの利益)
1回目は100円をもっているおり、所持金は偶数なので3円もらえて、103円になります。2回目は所持金は103円で、奇数なので5円失い、98円になります。そしてこれを100回繰り返しますが、
所持金が偶数のとき:偶数 + 奇数(3円) ⇒ 奇数
所持金が奇数のとき:奇数 – 奇数(-5円) ⇒ 偶数
という関係から、所持金が奇数の場合と偶数の場合が交互に出てくるので、次のようになります。
利益 = 100 + 50 × 3 + 50 × (-5) = 0
以上から、ゲームA、ゲームBいずれにおいても、所持金は0円になってしまい、負けとなります。
ゲームの組み合わせ
上の2つのゲームについて、ゲームBからはじめて、次はゲームAというように、交互にゲームを繰り返していく場合を考えます。
とりあえず、5回目までの結果を見てみると、次のような感じです。
1回目(ゲームB):所持金100円 ⇒ 偶数なので3円得る ⇒ 所持金103円
2回目(ゲームA):所持金103円 ⇒ 1円失う ⇒ 所持金102円
3回目(ゲームB):所持金102円 ⇒ 偶数なので3円得る ⇒ 所持金105円
4回目(ゲームA):所持金105円 ⇒ 1円失う ⇒ 所持金104円
5回目(ゲームB):所持金104円 ⇒ 偶数なので3円得る ⇒ 所持金107円
……
この数字からわかるように、
ゲームBの回:偶数 + 奇数(3円) ⇒ 奇数
ゲームAの回:奇数 – 奇数(-1円) ⇒ 偶数
が交互に繰り返されるので、次のように利益は計算できます。
利益 = 100 + 50 × 3 + 50 × (-1) = 200
このことから、負けるゲームAとBを繰り返したとき、逆に利益は増えて、ゲームを勝つことができます。
まとめ
以上から、個々のゲームでは負けでも、交互にそれぞれのゲームを繰り返すと、勝つゲームになることが分かります。
ただ、単純に繰り返せばいいというわけではありません。
例えば、上記について、最初にゲームAを行い、次にゲームBを行っていくというように、その順序を入れ替えると、所持金は0円どころから、マイナスになってしまいます。
参考
川越敏司『「意思決定」の科学』