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ゲーム理論の交互提案ゲームについて(数式)

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投稿ゲーム理論中級
ゲーム理論において、交互に提案をしあうという「交互提案ゲーム」について、説明します。
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はじめに

 経済学のゲーム理論においては、様々なゲームがありますが、プレイヤーが一度に選択を行ったりするのではなく、相手の反応を見ながら、どのように利益を分け合うかなど、交互に提案し合うというものがあり、「交互提案ゲーム」と呼ばれています。

 ゲーム理論では、どうしても現実の世界がイメージしにくかったり、理論としては分かるけど現実世界では利用できるのかといったりするものがあります。

 しかし、この交互提案ゲームは、賃金交渉や価格交渉、取引交渉など、現実世界でイメージしやすいモデルとなっています。

交互提案ゲーム

基本設定

 交互提案ゲームでは、2人のプレイヤーAとBがおり、利得1を分け合う状況を考えます。

 プレイヤーのうち1人は、利得1のうち、どれだけ自分のものにするかを提案します。もう1人は、提案を受け入れ、その提案額の残りを受け取るか、提案を拒否することができます。

 そして、このゲームは、提案が合意されるまで、継続することになります。

 なお、利得は交渉の回数が増えるほど、割り引かれるものとして、割引率を$\delta$とします。

 次より、プレイヤーAから提案が行われ、交渉が何回か行われた場合を見ていくことにします。

交渉が1回のとき

 プレイヤーAから提案が行われるのですが、交渉はこの1回で終わりです。
 プレイヤーBはAからの提案を受けるか、拒否して、利得を全く得られないかを選択することになります。

  1回目 … 提案者:プレイヤーA、応答者:プレイヤーB

 プレイヤーAはそのあとのことを考える必要がないので、利得1を提案するのが、最適です。プレイヤーBは、その提案を受け入れようが拒否しようが、利得は0のままです。

 この結果、それぞれの利得$(\pi_A \, , \, \pi_B)$は、次のようになります(なお、上付き文字の数字は、1回目を表しています)。

  $(\pi_A^1 \, , \, \pi_B^1) = (1 \, , \, 0)$

 なお、この交渉が1回の場合は、いわゆる「最後通牒ゲーム」になっています。

   最後通牒ゲームについて

交渉が2回のとき

 交渉が1回のときにはあまりこのモデルの意味はありませんが、交渉が2回以上の場合のここからが、交互提案ゲームのポイントになります。
 まずは、提案者と応答者を整理すると、次のようになります。

  1回目 … 提案者:プレイヤーA、応答者:プレイヤーB
  2回目 … 提案者:プレイヤーB、応答者:プレイヤーA

 このとき、重要なのが、1回目のプレイヤーAの提案です。
 なぜならば、1回目にプレイヤーAの提案が受け入れられなければ、2回目に交渉が進みます。2回目では、プレイヤーBが提案者になりますが、この交渉はこれで終わりと分かっているので、利得1を提案し、割り引かれた利得$\delta$を確保するのが、プレイヤーBにとっては、最適だからです。その結果、

  $(\pi_A^2 \, , \, \pi_B^2) = (0 \, , \, \delta)$

となり、プレイヤーAの利得は$0$になります。

 これを避けるためには、プレイヤーAは1回目で交渉を成立させる必要があります。それを実現するには、プレイヤーAは、1回目の交渉で、2回目でプレイヤーBが得られる利得を保証してやる必要があります。
 すなわち、プレイヤーAは1回目にて、$1 \, – \, \delta$を提案して、プレイヤーBの利得を$\delta$とするのが最適な提案になります。この結果、

  $(\pi_A^1 \, , \, \pi_B^1) = (1 \, – \, \delta \, , \, \delta)$

が実現することになります。

交渉が3回のとき

 次に、交渉がもう一回増えて、3回の場合を考えましょう。
 このときの提案者と応答者を整理すると、次のようになります。

  1回目 … 提案者:プレイヤーA、応答者:プレイヤーB
  2回目 … 提案者:プレイヤーB、応答者:プレイヤーA
  3回目 … 提案者:プレイヤーA、応答者:プレイヤーB

 上記と同じように、3回目では、プレイヤーAは$1$を提案するので、3期まで交渉が行われると、それぞれの利得は、次のようになります。

  $(\pi_A^3 \, , \, \pi_B^3) = (\delta^2 \, , \, 0)$

 しかしこれでは、プレイヤーBは困るので、2回目において、利得は$\delta$と割り引かれていることに注意すると、$\delta \, – \, \delta^2$を提案し、プレイヤーAの利得$\delta^2$を確保してあげようとするはずです。この結果、

  $(\pi_A^2 \, , \, \pi_B^2) = (\delta^2 \, , \, \delta \, – \, \delta^2)$

となります。

 更にこれを1回目まで遡ると、次のようになります。

  $(\pi_A^1 \, , \, \pi_B^1) = (1 \, – \, \delta + \delta^2 \, , \, \delta \, – \, \delta^2)$

交渉が4回のとき

 細かな説明は省略しますが、次のような利得になります。

  $(\pi_A^4 \, , \, \pi_B^4) = (0 \, , \, \delta^3)$

  $(\pi_A^3 \, , \, \pi_B^3) = (\delta^2 \, – \, \delta^3 \, , \, \delta^3)$

  $(\pi_A^2 \, , \, \pi_B^2) = (\delta^2 \, – \, \delta^3 \, , \, \delta \, – \, \delta^2 + \delta^3)$

  $(\pi_A^1 \, , \, \pi_B^1) = (1 \, – \, \delta + \delta^2 \, – \, \delta^3 \, , \, \delta \, – \, \delta^2 + \delta^3)$

参考

  岡田章『ゲーム理論・入門

  中山幹夫『はじめてのゲーム理論

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