はじめに
等比級数とは、
$ a \, , \, ax \, , \, ax^2 \, , \, a x^3 \, , \, \cdots$
というようなもので、有限の場合には、等比級数の和は
$ X = a + a x +a x^2 + a x^3 + \quad \cdots \quad a x^n \quad \cdots \quad (1)$
というような式のことです。
数学的には初歩的なものですが、経済学では当たり前のように出てくるので、改めて公式や導出方法について、説明します。
有限等比級数の和
有限の等比級数の和である$ (1)$式を考えましょう。
$ X = a + a x +a x^2 + a x^3 + \quad \cdots \quad a x^n$
この式に、$ x$を掛けると、
$ xX = a x + a x^2 + a x^3 + \quad \cdots \quad a x^{n+1} \quad \cdots \quad (2)$
が得られます。
そして、$ (1)$式から$ (2)$式を引くと、
$ X – xX = (a + a x +a x^2 + a x^3 + \quad \cdots \quad a x^n) – ( a x +a x^2 + a x^3 + \quad \cdots \quad a x^{n+1})$
となり、この式を整理すると、
$ (1-x)X = a – ax^{n+1}$
から、次のような等比級数の和の公式が得られます。
$ X = a \dfrac{1 – x^{n+1}}{1-x} \quad \cdots \quad (3)$
無限等比級数の和
次に、次のような無限等比級数の和を考えましょう。
$ X = a + a x +a x^2 + a x^3 + \quad \cdots$
これは、有限の等比級数の和である$ (3)$式について、$ n \rightarrow \infty$としたものなので、
$ \displaystyle X = \lim^n_{n \rightarrow \infty} \left( a \dfrac{1 – x^{n+1}}{1-x} \right)$
と置き換えることができ、この式を整理すると、
$ X = a \dfrac{1}{1-x} \quad \cdots \quad (4)$
という無限等比級数の和の公式を得ることができます。
例
無限等比級数の和の公式を用いた例として、投資プロジェクトを考えます。
この投資プロジェクトは、最初に$ C$の費用が発生し、次の期から毎期$ \pi$の利益を得ることができるとします。そして、割引率を$ r$とすると、この投資プロジェクトの価値$ V$は、次のようになります。
$ \displaystyle V = \left[ \frac{\pi}{1+r} + \frac{\pi}{(1+r)^2} + \frac{\pi}{(1+r)^3} + \quad \cdots \right] – C$
この式について、無限等比級数の和の公式$ (4)$を用いて、$ x= 1/(1+r)$とすると、
$ \displaystyle V = \left[ \dfrac{\pi}{1-\dfrac{1}{1+r}} – \pi \right] – C$
となります(なお、$ -\pi$というものがあるのは、この式では、無限等比級数の和の公式の右辺第1項の$ a$がないためです)。
そして、式を整理すると、
$ \displaystyle V = \dfrac{\pi}{r} – C$
という式を得ることができます。
すなわち、この投資プロジェクトの価値は、毎期の利益$ \pi$を割引率$ r$で割ったものから、費用$ C$を差し引いた額になります。
最後に
式としては難しいものではありませんが、比較的よく使われるので、覚えておきましょう。
(覚えておかなくても、簡単に導出できるとも言えますが…)