選択アーキテクチャーは、個人の選択環境を設計するものです。
個人が選択を行う場合、その個人は必ずしも合理的ではなく、選択に当たっての少しの環境によって、選択は大きく変わってきます。そして、その選択環境を意図的に設計するものが選択アーキテクチャーになります。
選択アーキテクチャーは、世の中のあらゆるところに見られ、人は意識せずに、選択アーキテクチャーに従って、行動しています。
例えば、道路を歩くとき、車道と歩道を分離するために、白線が引かれていたりします。道路交通法においてどうかは別として、一本の線を描くだけで、歩いている人は歩道を歩くように促されます。
ところで、この選択アーキテクチャーについて、法学者のサンスティーンは、
・コントロールのアーキテクチャー
・セレンディピティのアーキテクチャー
といった概念を述べています。
コントロールのアーキテクチャーとは、個人のコントロールや選択を反映するアーキテクチャーです。
例えば、ネット通販において、過去の商品の閲覧・購入に基づいて、お勧めの商品が紹介されたり、Youtubeの視聴にあたり、過去に閲覧した動画に関連した動画が、動画一覧に表示されるといったものです。
より多くの商品を購入してもらおう、より多くの動画を見てもらおうとするために設計されたアーキテクチャーであり、このコントロールのアーキテクチャーになります。
他方、セレンディピティのアーキテクチャーとは、個人に思いがけない発見などを可能にするアーキテクチャです。
思えば、本屋には、このセレンディピティのアーキテクチャーがあったのかもしれません。本は個人の嗜好や趣味に大きく左右され、特定の分野の本を見たり、購入しがちになります。例えば、編み物に興味がない人は、一生、編み物に関する本を読んだことはないでしょう。
しかし、本屋に行くと、入口のすぐそばやレジ前などに、ベストセラーや店舗お勧めの本があったりして、興味があるなしに関わらず、新たな発見をもたらしてくれます。元々は全く興味がなかったにもかかわらず、時にはその本を手にとったり、購入したりすることもあります。
このように、あえて偶発的な要素を設計し、新たな発見をもたらしてくれるようなものが、セレンディピティのアーキテクチャーになります。
サンスティーンは、現在では、コントロールのアーキテクチャーが強くなっており、セレンディピティのアーキテクチャーの重要性を説きます。
特に、ネット社会になり、自ら関心のある情報のみに取り込まれるフィルターバブルといった問題があり、それを防止するうえでも、セレンディピティのアーキテクチャーが重要とされます。
参考
那須耕介・橋本努編著『ナッジ!?: 自由でおせっかいなリバタリアン・パターナリズム』