外的モチベーションと内的モチベーション
勉強・仕事など、何を行うにも、モチベーションは非常に重要です。
試験を控えていても、モチベーションややる気が起きなければ、勉強をせず、良い点数をあげることは難しいでしょう。
逆に、勉強についてモチベーションが高まり、どんどんと勉強をするような心理になれば、試験において、高得点が期待できます。
ところで、行動経済学において、このモチベーションには、次の2つのモチベーションがあることが知られています。
外的モチベーション
外的モチベーションとは、外部から与えられる報酬や評価が動機となる場合のことを指します。
行動の目的が、金銭・賞賛などの外的な報酬を得ることにあるため、行動そのものに対する興味や喜びは必ずしも存在しないことがあります。
内的モチベーション
内的モチベーションとは、行動そのものが目的となる場合に生じる動機を指します。
例えば、ある行動を楽しんだり、自己成長を感じたり、好奇心を満たしたりすることが、行動を引き起こす主な理由となり、これを内的モチベーションと言います。
この場合、外部からの報酬や評価は不要で、行動自体が充実感や満足感をもたらします。
例えば、勉強をする動機として、いい点数をとるためというのは、外的モチベーションになり、勉強が楽しいからというのは、内的モチベーションになります。
内的モチベーションのクラウディング・アウト
外的モチベーションと内的モチベーションは、それぞれが全く分離されているわけではなく、相互に影響し合っていることが、行動家在学の研究で知られています。
この中で、外的報酬を与えると、外的モチベーションが上がるわけですが、これにより、内的モチベーションがなくなったり、弱まったりするという「クラウディング・アウト」があることが知られています・。
クラウディング・アウトの具体例
イメージが湧きやすいように、どのような場合に、内的モチベーションがクラウディング・アウトされるのかを、例をあげましょう。
勉強
子供が興味や好奇心で学んでいた内容について、親が「テストで良い点を取ったらお小遣いをあげる」と報酬を提示した場合、子供は純粋に学ぶ楽しさを感じなくなり、テストで良い点を取るためだけに勉強するようになることがあります。
その結果、学ぶこと自体の内的モチベーションが低下します。
趣味
絵を描くことが好きな人が、自分の楽しみや表現のために絵を描いていたところ、友人や家族が「描いた絵を売ってみたら?」と提案し、実際に売るようになると、お金を稼ぐことが主な目的になり、描くこと自体の楽しさが減少することがあります。
ボランティア
社会貢献や他者を助けることにやりがいを感じてボランティア活動をしている人に対して、団体が「ボランティア時間に応じて、お金を支払う」と発表すると、活動の動機が変わり、報酬を得ることが主な目的になってしまう可能性があります。
これにより、助けたいという内的なモチベーションが弱まります。
仕事
ある従業員が仕事に対して情熱を持ち、自己成長ややりがいを感じて取り組んでいる場合に、企業が「一定の目標を達成したらボーナスを支給する」といったインセンティブを導入すると、目標達成そのものが主な動機となり、仕事に対する情熱や内的モチベーションが低下することがあります。
スポーツ
健康や体力向上のために趣味でランニングをしている人が、あるとき「マラソン大会で上位に入賞したら賞金が出る」と知り、それに向けてトレーニングを始めると、次第に走ること自体の楽しさよりも、賞金を得ることが目的となり、内的モチベーションが減少することがあります。
参考
ミシェル・バデリー『エッセンシャル版 行動経済学』